top of page

僕はいろんな町を見た

 

いろんな橋も見たさ。

 メリーゴーラウンドがどんどんどんどん速く回れば、みんな振り落とされないように木馬の首でも何でも、目の前にある物に一生懸命にしがみつくよね。長い橋をいっぺんに飛ばしてこっちからあっちへ、あっと言う間に渡ろうとするのは、そうすれば橋に振り落とされないからなの。だからたいていの人は疑問もなくその大きな橋を全速力で渡るんだ。その方が早いしさ、何か考える必要もないからね。だけどその橋があんまり大きすぎて渡れない人もいると思うの。こわくてさ。足がすくんでしまってさ。そういう人はあっちからこっちへの途中で、橋の中程でたたずんでしまうの。橋の真ん中にたたずんで、下を見たり、周りの景色をぼんやりとながめたり、その下にあるのが川だったら水の流れるのを見たりして、そして何かを考えてしまうの。そうすると、橋はいじわるだから回りだすの。クルクルクルクル橋が回ると、調子がおかしくなったメリーゴラウンドみたいに、その人の周りで世界中が回りだすの。

 僕はいろんな町を見て、いろんな橋を見て、例えば子供たちがその橋を渡ろうとして、そのなかには、もしかして橋を渡れない子たちもいるかもしれないって、そう思ったの。回る橋の真ん中でどうしたらいいか分からなくって、うっかりして橋から落ちてしまう子がいたって不思議じゃないよ。いつか〈緑橋〉に佇んで泣いていた女子高生だって、そういうひとりだったかもしれないよね。だとしたらやっぱり僕はここにいて、見張りをしていなければいけないんだ。〈緑橋〉はもうなくなってしまったけれど、ここにどうしても橋が必要ならば、またいつか新しい〈緑橋〉が架けられるに決まってるでしょ? 

東京近郊のおすすめBBQスポット | 亀山社中焼肉市場

bottom of page