top of page

一生懸命で緊張している

 

芝居を見せられるからであろう。しかもその舞台に現われている役者は両方とも極めて真剣である。すくなくとも男の方は一方ならず感心しているらしい。いつの間にか女の美貌と、その巧妙な話術に引き込まれて、肝腎の用向きも何も忘れた体である。ストーン氏は又もすこし躊躇しながら、微笑しいしい問うた。

「……失礼……御免下さい。私は先生は本当に一人かと思っておりました」

「え……」

 と女は質問の意味がわからなかったらしく顔を上げた。ストーン氏はいよいよ躊躇した。

「……失礼……おゆるし……なさい。狭山さんは、いつもほんとうに一人でこの家に暮しておいでになる事を、亜米利加で聞いておりましたが……」

 女はちょっとうなずいた。けれども返事はしなかった。ストーン氏はとうとう真赤になってしまった。

「……大変に……失礼です。先生は……貴方のお父さんですか」

 女はやっと莞爾してうなずいた。そうして心持ちSの字になって、うなだれた。

「はい。狭山は妾のたった一人の親身の叔父でございます。妾も亦叔父にとりましてはたった一人の姪なのでございますが、いつも妾を本当の子供のように可愛がってくれますから、本当に父になってくれるといいと……いつもそんなに思っているのでございます」

 といううちに今度は女の方が耳まで真赤になってしまった。

錦糸町の美容院で美髪美人を提案

bottom of page