top of page

白い埃の立つその町

 

人力車も時々見かけた。町の文明の程度を思わしめるような、何かなしきらきらした床屋があったり、店の暗い反物屋があったりした。冬の薄い日光を浴びて、白い蔵が見えたり、羽目板の赭い学校の建物が見えたりした。 笹村の疲れた足は、引き返そう引き返そうと思いながら、いつかそのはずれまで行ってしまった。そこからはまだ寒さに顫えている雑木林や森影のところどころに見える田圃面が灰色に拡がっていた。 その白けたような街道では、東京ものらしいインバネスの男や、淡色のコートを着た白足袋の女などに時々出遭った。 笹村はその道をどこまでもたどって行った。

時々白い砂の捲き上る道の傍には、人の姿を見てお叩頭をしている物貰いなどが見えはじめて、お詣りをする人の姿がほかの道からもちらほら寄って来た。それがだんだん笹村を静かな町の入口へ導いて行った。 この町にも前に通って来た町と同じような休み茶屋や料理屋などがあったが、区域も狭く人気も稀薄であった。不断でもかなりな参詣人を呼んでいるそこの寺は、ちょうど東京の下町から老人や女の散歩がてら出かけて行くのに適当したような場所であった。四十から五十代の女が、日和下駄をはいて手に袋をさげて、幾人となくその門を潜って行った。中には相場師のような男や、意気な姿の女なども目に立った。

表参道のヘアスタイル ヘアカタログ

bottom of page